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アレルギー・花粉症 最新の研究と治療法
<アレルギーについて>
1.免疫は万能ではない
免疫とは、人間の身体を異物から守るための機能です。
細菌やウイルスに対して感染を予防したり、感染してしまったさいに体内からこれらを排除してくれます。
新型コロナウイルス以降、免疫というワードをよく耳にするようになりましたね。
また、がん治療についての記事を書く際にも、よく触れられるとても重要な機能です。
しかし残念ながら、免疫は万能ではなく、必ずしも有害な異物にのも反応するわけではなく、身体にとって無害なはずの食べ物や花粉などの異物が侵入したときにも、免疫機能が過剰に反応してしまい、その結果、様々な症状を発症してしまうことがあります。
この現象を「アレルギー」と呼びます。
アレルギーの種類や症状はさまざまで、食べ物で起こる食物アレルギー・皮膚に起こるアトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎・気管支で起こる気管支喘息・花粉に対して過剰反応する花粉症などがあります。

2.気を付けるべき「経皮感作」とは?
皮膚が正常な場合には、肌に異物がふれてもバリアが機能していて問題ありません。
ですが、皮膚のバリアが破れた状態で異物にさらされると、その異物が肌から体内に侵入してしまいます。
その異物にランゲルハンス細胞などの免疫担当細胞が反応し、アレルギーを起こす状態になります(これを感作と呼びます)。その結果、異物に対する食物アレルギーを発症すると考えられています。
このように、異物が侵入することでアレルギーになってしまうことを「経皮感作」と言います。
3.アトピーになる原因
経皮感作で引き起こされるアレルギーには、アトピー性皮膚炎も同様に考えられています。
ですので、皮膚を健康に保ち、バリア機能を維持することで、アトピー性皮膚炎の発症を抑えることができるというエビデンスが出てきているのです。
この経皮感作でアレルギーを引き起こした例が、日本にもあります。
福岡の化粧品会社「悠香」が製造販売する「茶のしずく石鹸」を使用していた2111人もの人が、小麦に対する食物アレルギーを引き起こしたのです。
25%がアナフィラキシーショックを、43%が呼吸困難を起こすなど重篤な例も多く含まれていました。
この石鹸には当時、加水分解された小麦のたんぱく質である「加水分解コムギ」が含まれており、繰り返し使用することで経皮感作を引き起こし、結果としてコムギアレルギーを発症してしまったとみられています。
4.アレルギーを予防する驚きの方法
2008年まで、消化機能が未熟なうちに食べることで感作してアレルギーになるという説が主流だったのですが、この年に報告された研究結果によると、ピーナッツを乳幼児期に摂取しないイギリスの子供の1.9%がピーナッツアレルギーをもっていたのに対して、生後8~14か月のイスラエルの乳幼児は平均7g摂取しますが、イスラエルの子供のピーナッツアレルギーの保有者はわずか0.2%でした。
その後の2つの大規模な研究の結果によって、より早期にアレルゲンを経口摂取することはアレルギー発症の予防に有効であることが明らかになりました。
ただし、乳幼児についてはアレルギーリスクの高い食品を経口摂取することで、重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性があるため、そのタイミングに関しては、個々の血液検査などでリスクを評価してから、経口摂取を開始する場合もあります。
このように現在では、異物は皮膚(特にダメージを受けた皮膚)から体内に侵入するとアレルギーの原因になる一方で、口から暴露されると逆にアレルギーのリスクを下げると考えられています。
アレルギーに関してはまだわかっていないことも多いので、今後の研究結果が出てくることによって、また予防や治療といった対策が可能になることが期待されます。

<花粉症について>
1.日本人の4人に1人が花粉症
花粉症は日本人の4人に1人がかかっており、年代によっては半数近くがかかっているとされる国民病です。
命にかかわるような重篤な病気ではないかもしれませんが、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎、頭痛・微熱・だるさなどといった辛い症状のため、生活の質が大きく落ちてしまう人も多く、経済損失は2800億円にのぼるというデータもあります。
2.スギ花粉症が激増した理由
日本での花粉症の約7割が、スギ花粉と言われています。
1960年ごろから急増しており、1980年代から2000年の間に2.6倍に急増しました。
戦後復興期の日本では、農林水産省が日本各地に、成長が早く建材としての価値が高いスギやヒノキの植林をすすめてきたことで、スギ花粉の飛散量が増加しました。
そこにもってきて、1964年に輸入木材に関する関税が撤廃されたことで、国内スギの需要が減少し、多くのスギが伐採されることなく放置されることとなりました。
これらの結果として、大量のスギ花粉に暴露される日本人が増えたと言われています。
3.最も効果的な対策
花粉症対策として最も効果的なのは、原因となる花粉に、できるだけ暴露しないことです。
帰宅した際は、服や髪についている花粉を落とすため、着替えてシャワーを浴びるなどの対策も有効です。
また、生理食塩水による鼻うがいで、鼻の粘膜に残っている花粉を取り除くことは、症状改善に有効です。
ただし、鼻うがいを水道水で行うべきではありません。
水道水に入っている塩素は、口から入れる分には胃酸で消毒されるため安心ですが、鼻うがいで使うには胃酸による消毒がおこらないから注意が必要です。
水道水による鼻うがいによって、非結核性抗酸菌という細菌による慢性副鼻腔炎が起こったと報告されています。また、海外では汚染された水道水を用いた鼻うがいによって、「脳食いアメーバ」が脳に入り込み、髄膜脳炎を起こして死亡したとの報告もあります。
必ず、鼻うがい用の専用キットを使用するか、一度煮沸消毒した湯冷ましを使うようにしてください。
4.症状をコントロールする対症療法
これまでは、症状を抑える対症療法がメインの治療でありましたが、近年では新しい根治療法も登場してきています。
・対症療法ー症状をコントロールする
<くしゃみや鼻水が主体> 抗ヒスタミン薬(第2世代)
化学伝達物質遊離抑制薬(商品名インタール、リザベン、アレギサール)
<鼻づまりが主体> 抗ロイコトリエン薬(商品名オノン、シングレア、キプレス、プランルカスト)
鼻噴射用ステロイド薬
ステロイドと効くと副作用の心配をするかもしれないが、免疫機能が下がったり糖尿病のリスクが上 がったりといった全身性の副作用の心配はないようです。
ですが、鼻局所の副作用として、鼻刺激感・乾燥感・鼻出血などが時々見られます。
鼻の奥の粘膜をレーザーで薄く焼くことで、アレルギー反応を起こしにくくする治療も行われています。
5.根治を目指す新しい療法
花粉症を根本から治療していく根治療法もあります。それがアレルゲン免疫療法です。
・減感作療法(皮下免疫療法)
花粉の嫡出液を薄めた物を注射して、その後少しずつ濃度を上げて注射することで、花粉 症に対する免疫を獲得させます。
・舌下免疫療法
上記のものを舌下に投与することで免疫を獲得させる。こちらの方が副作用が少ない。
また、自宅でできるため現在はこちらの方が主流になっています。
現在、シダキュアスギ花粉舌下錠という薬があります。こちらは実験の結果、花粉症の症状を20~30%軽減させるのに有効だったと報告されています。
ちなみにスギ花粉による研究ではないけれど、花粉症による免疫療法によって気管支喘息の発症が予防されたという報告もあります。(現時点で、舌下免疫療法は喘息には保険適用していません)
引用元)「HEALTH RULES 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣」RULE8より
著者:津川友介(UCLA准教授・医師)
出版社:集英社
発行年:2022年1月30日
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