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<ドキュメント がん治療選択>の著者 金田信一郎さんによる お世話になった病院長へのインタビュー
先日、がん治療本のご紹介①という記事の中で紹介させていただきました「ドキュメント がん治療選択」の中で、著者の金田信一郎さんが、東大病院とがんセンター東病院を退院後に、それぞれの病院長にインタビューをした様子が最後の方に出てきます。
前回の著書の紹介では、あくまで患者目線からこうあってほしい理想の在り方が切々と語られており、大変私も共感しておりますが、今度は各病院長へのインタビューというだけあって、医師や病院目線での患者さんへのかかわり方や在り方が語られています。
以下、金田さんがインタビュー形式で語られているものをまとめてみました。

インタビュー
東京大学医学部附属病院 病院長 瀬戸泰之氏
瀬戸先生は食道がん専門の先生で、ロボット支援手術の第一人者であり、低侵襲性手術を食道がんの手術に初めて取り入れられた先生です。
それまで食道がんの手術は大掛かりなもので、開胸してろっ骨を折り、肩肺をつぶしてようやく初めてがん治療の手術ができるという大変なものでした。しかし、その大変さの割には合併症リスクが4割ぐらいあり、肺炎で死亡する患者さんもいました。また、術後は必ず人工呼吸器を必要とする手術でした。
患者さんのダメージが大きいので、瀬戸先生は何とか手術のダメージを少なくする方法はないだろうか、との思いから低侵襲性手術に行き着くようになります。
それがテクノロジーの進歩によって生まれたダヴィンチという手術支援ロボットとの出会いによって可能になります。
ダヴィンチには細い指のようなアームがついており、人間の手が入らない狭いところでも入っていきます。アームの先端は関節のように曲がり、様々な操作ができます。
当初はアメリカでも今までと同じ胸を経由する方法で、このダヴィンチを使って手術がなされていましたが、瀬戸先生はこのアームをお腹から入れて、食道がんの根治手術をしようとしました。2012年ー胸を開けず肺を潰さない、世界で初の試みでした。
その患者さんは70代の方で、ステージ2の食道がんでしたが、おかげさまで今もお元気にされているそうです。
2018年にはダヴィンチ手術も保険適用となっています。
ただ、ダヴィンチを使って手術をする病院は増えたものの、そのほとんどがいまだに胸腔鏡手術で使っているため、残念ながら胸を開ける手術がほとんどだそうです。
難しいので、見学にいらっしゃる医師は多いのですが、ご覧になられてなかなか踏み切れないでいるのが現状のようです。
がんの標準治療に対する考えとして、まず手術はなくならないということ。
放射線治療の進歩や分子標的薬の導入などにより、手術の役割が相対的に小さくなっているように見えても、やはりステージ3ぐらいまでは手術が標準治療になっています。
いかにその他の治療と組み合わせて行うかが大切だとおしゃられています。
また、手術・抗がん剤・放射線にはそれぞれ役割が違います。
例えば、抗がん剤をなぜ実施するかというと、全身に薬の効果がいきわたるからです。
目に見えないところまで薬を届けることができますし、内視鏡では確認できないほどの小さながんがある場合には有効です。
手術は患部を取り出すことができることから、顕微鏡検査ができたり、周囲のリンパ節も一緒に取り出して転移がないかをみることができます。
著者の金田さんは東大病院に入院して「抗がん剤3クールやって手術」という計画でしたが、1クール終わった後に手術を取りやめて放射線治療に切り替えました。
この点について、最初から放射線でやるという選択肢はなかったんでしょうか、と聞いておられます。
瀬戸先生の答えは、「患者さんが希望すれば実施しますが、放射線治療は体の中に火傷を起こすため、皆さんが思っているほど患者さんに優しい治療ではありません。手術との最大の違いはがんを取り除くわけではないので、きれいに消えたとしてもまた出てくる可能性があります。全国調査した結果では、4割程度はまたがんが出てきています。再発したら手術をすればいいとおっしゃいますが、放射線を当てた後の患部は組織が固くなっているので手術が難しくなります。」とのことでした。
また、食道に対して放射線を当てるということは、肺にも放射線が当たってしまうというデメリットが生じ、「晩期毒性」といって4、5年たってから後遺症が出ることもあります。
以上の理由から、医師の方から放射線治療を切り出すには心理的なハードルが高く、抗がん剤→手術という流れを提示することが多いそうです。
それでも金田さんのように、放射線で治療を受けたいという患者さんには、その思いを尊重して放射線科を紹介しているようです。
また、金田さんに対しても最終的に放射線治療を選んだのも、抗がん剤を受けている最中にしっかりと考える時間があったからではないでしょうか、と鋭い問題提起をされています。
金田さんの方も瀬戸先生のおっしゃる通り、治療一か月前だと片づけなければいけない仕事に追われて、治療についてなど考える時間もなかったので、手術が先にきていれば何も考えることなく受けていただろうな、とお答えしています。
抗がん剤が3クール9週間もあったので、なんとかギリギリ自分の病気の把握も含めて、その間に考えることが出来たそうです。
金田さんはご自身の経験から、他の患者さんは大丈夫かなとつい考えてしまうのですが、そこは瀬戸先生は、患者さんにもいろいろなタイプがいますし、ほとんどの方は先生にお任せしますとおっしゃるそうです。
また、本人よりご家族の意志が強い場合もあるとおっしゃられています。
そこで、金田さんはついに「医療のことをわかっていない患者さんも多いということも踏まえた上で、病院側がもう少し患者さんに病気の状態や治療法の選択肢を提示するような説明があってもいいのではないかと思いました。」という本音をぶつけてみました。

それに対して返ってきた答えには、私も想像できませんでした。
瀬戸先生個人も、そういった詳しい説明を設ける場をもって丁寧にした方がいいとは思っているそうです。ですが、日本の医療制度にはそれを支えるものがないため、実際のところ本当に必要になったときは、医師が休日を返上して無給で対応しているというのが現実だそうです。
例え、そのような相談ができる窓口をつくったとしても、保険点数がつかないため、その人件費を負担するところが不明瞭のままになります。
医療制度を抜本的に見直さなくてはできない仕組みがあるということでした。
個人的にも、患者さんの不安を支える仕組みでもあるわけですから、やはり早急になんとかならないものだろうかと思ってしまいます。
そして、ゲノム診療も日々進歩しています。
遺伝子原因別の薬が、がん治療として始まっていくはずです。
これまで転移があるかどうかわからないリンパ節まで取り除いていた手術も、転移がどこにあるか明確に分かるようになってくれば手術の領域はさらに小さくなるはずで、それが低侵襲化の方向につながっているのです。
最後に、瀬戸先生は医師として、患者さんの社会背景や年齢などはいったん無視して治療方針を考えることに集中し、それを提示したうえで、そこから先は患者さんと相談して決めていくそうです。
そして、患者さんの方もがん宣告をされたら、時間があくと進行するのが心配なのか、早く手術をしてほしいとお願いするケースも多く、金田さんのようにじっくり考えて結論を下す人の方が少ないそうです。
個人の価値観によりますが、金田さんのように自身の意志を強く持っておられるような方は、治療について後悔しないよう自分でも調べて知識を付けたり、セカンドオピニオンに頼るなりしていった方がいいのかなとも思えますし、下手に自分が介入せず先生にお任せした方が安心安全と思えるような方は、先生の提示する治療法を受け入れていく方がいいのかもしれません。
ただ、今後は治療方がもっと細分化していくことが予想されますので、患者さん自身も自分の病状ぐらいは学んで、自分の意志をもって治療法を選択できるようになれるといいのではないか、また、それを支える医療制度ができるといいなと願っております。
もう一人インタビューされた病院長には、明日また改めて記事にしたいと思います。
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