世界の医療ビジネス比べ

今、世界の医療は医師などの専門家だけでなく、さまざまな分野からビジネスとしての参入があり、それぞれが医療の発展に貢献しているというのが現状です。

本日は、世界の医療ビジネスに特化して記事を書いてみました。

最後に、日本でできるこれからの医療ビジネスについても、まとめてみました。

<アメリカ>

アメリカでは公的な健康保険が65歳以上を対象としたメディケアと低所得者を対象としたメディケイドの二つしかありません。ですので、これらの対象にならない大多数のアメリカ人は、民間企業が提供する何らかの健康保険に入っていなければいけません。

そういった観点から、予防医学がとても重要視されています。

また、政府の干渉が少なく民間企業に任せているため、医療をビジネスとして成立させて発展させるためのスキーム作りが巧みです。

ディジーズ・マネジメントといって、保険会社主導で、患者や患者予備軍の集団に働きかけて、さまざまなアプローチにより集団の疾病リスクを低減させる予防支援サービスがあります。

このシステムでは病気になった人やその予備軍が、予防に努めてくれるほど医療機関や保険会社の収益が上がるので、予防に努めた人には保険で治療費が賄われる範囲が広くなり、逆に、予防しなかった人が発症した場合には、保険でカバーできる治療費が狭くなるといった差別化を図ったマネジメントで、加入者が自然と予防に努めざるを得ない環境に置かれているのです。

難病や依存症の人たちが集まって、情報交換をしたりつながって語り合ったりする「患者会」すら、ビジネスモデルとして成立しています。

その代表例が、2005年にサービスを開始した「PatientsLikeMe」というSNSです。このサイトにユーザー登録しているのは、主に難病を抱える患者さんやその家族たちで、彼らは自分のあらゆる情報を登録することによって、同じ疾患をもつ人と繋がって情報交換をし、治療に役立てたりしています。

一方でサイト側は、参加者が記入したデータを集積し、匿名化して製薬会社に販売するというのがビジネスモデルとして成立しているのです。

2007年には、月間経済紙「Business 2.0 Magazine」による「世界を変える15社」に選出されています。

これとは対照的なのが、創薬から治験までといった新薬開発のプロセスです。

アメリカの代表的な製薬企業の莫大な資金力で、新薬開発にかかる10年以上の時間と数百億円の費用をかけ、成功確率が5%程度と見込まれるプロジェクトを20個同時並行で進め、この中の一つが成功すればいいというくらいの鷹揚さでビジネスができている状況です。

<エストニア>

エストニアは日本人からすれば、馴染みのない国で初めて名前を聞く人も多いかもしれません。地理的にはバルト三国の一つとして、1991年にソ連から独立しました。

独立してすぐにITによる立国を推し進め、スカイプを生み出した企業もエストニアにあり、2008年からはNATOのサイバーテロ防衛機関の本部が置かれています。

また、最近ではビットコインを通貨として採用するなど、ビットコイン誕生以前から、暗号通貨に使われるブロックチェーンの技術研究もおこなわれている国です。

そういった技術力を生かして、ブロックチェーンを医療へ積極的に応用しています。

エストニア国民は全員IDを付与されていて、医療情報を含む全個人情報が番号に紐づけされて管理されています。この仕組みにより、医師は患者さんから聞かずとも、これまでの既往歴や薬の服用歴に応じた適切な診察を行うことができるわけです。

また当然、この仕組みは暗号化されており、医師であろうと診察に必要のない情報にはアクセスできません。

<イスラエル>

周辺を政治的・宗教的に対立する国々に取り囲まれているイスラエルは、そういった事情から国の歳出全体の11%に相当する額を軍事費に費やしています。

イスラエルの場合はそれだけでなく、その軍事費で開発された最先端技術を、さまざまな形で民間転用し、欧米や日本へ輸出品とするルートが確立されているのです。

イスラエルでは18歳以上の男女に兵役があり、その中でも優秀な理工系の学生は、軍の研究開発部門に配属され、最先端の軍事技術の開発を行うことになっています。

そして、この部門の出身者の多くが退役後に、AIやサイバーセキュリティなどの分野で起業しており、その中には画期的な医療ベンチャーもたくさん含まれています。

このようにして開発されたイスラエル発の医療技術には、CollPlant社が開発した臓器の3Dプリンティング技術やHeraMED社による妊婦を遠隔モニタリングする技術などがあります。

実はいしゃっちでも、イスラエルのスタートアップ企業巡りをしたことがあるのですが、本当に医療に関する技術開発を行っている企業を多く見かけました。

軍事技術を民間で使えるように、専用の眼鏡をかけると眼を通してその人の健康状態をスキャンする技術を開発途中な企業様や左右両サイドのうっすら視界に入る部分を前に持ってくることで、前面と左右両サイドの光景を同時に見せることにより、視界が広くなる眼鏡、尿から病気を早期発見しようとセンサーをつけて、テクノロジーと一体化する便器を開発途中の企業様と、まだ途上ではありますがとてもユニークなスタートアップ企業が競合しています。

そして、医療における技術革新をおこして市場に羽ばたくスタートアップ企業を取りまとめ、技術の売り出しや投資家さんを集めるサポートをするエージェントも存在しています。

<日本>

実はこうした軍事技術の転用で最も有名な技術はアメリカにもあります。

それは、インテュイティブサージカル社が開発した手術用ロボット「ダヴィンチ」です!

日本でも2000年に慶応義塾大学病院に初めて導入されて以来、腹部や胸部の内視鏡化手術に使用されています。

元々は、1980年代末にアメリカ陸軍が戦場の負傷者に対して、遠隔操作で手術を行うために開発した技術を民間に応用したものなのです。

エストニアにせよイスラエルにせよ、限られたリソースを余すところなく特定分野に集中させています。本来なら、日本もこのように日本らしさを活かした発展があるはずなのですが、全体でみるとなかなか取り組みが遅いのが現状であると思われます。

その理由の一つとして、医療情報を共有するという世界のスタンダードが、個人情報保護という点から、なかなか進まない傾向にあるようです。

確かに、個人が特定されてしまうようではプライバシーに関わりますが、属性で区切って生化学データを取る程度までなら、社会の共有財産とみなされて医療の発展のためには大きな価値をもつと思われます。

また世界的にみると、医療ツーリズムといって医療サービスを受けることを目的として海外に渡航するという流れにもなってきています。

いしゃっちでもすすめている統合医療の考え方から、代替医療や伝統医療を求めて海外に行く人、または美容医療目的などさまざまいらっしゃいます。

日本は世界でも有名な観光地でもあるところから、おもてなし感覚で医療ツーリズムを含めた観光なんかもいいですね。

引用元)

「未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと」第6章 これが医療の世界標準より

著者:奥 真也(医師・医学博士)

出版社:講談社現代新書

発行年:2020年10月1日発行

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「医者や病院任せではなく、自分を知って治療法を選ぼう」医療に対する考え方や治療法の選び方が多様化している現在において、いしゃっちはそのひとそれぞれの状態や信念に基づいて、無理なく負担がない治療法を一番に推奨したいために、統合医療という形で情報提供していくつもりです。気軽にいろんな治療法を知っていただき、ご自身に合ったものを選んでいただけたらと思いまして、とかく重たくなりがちな医療ですが、いしゃっちという軽やかな名前を付けさせていただきました。

目次