ダイエット~体重を確実に減らす科学的な方法

肥満は2型糖尿病や脳梗塞・心筋梗塞・がんなどのリスクを上げることがわかっています。

BMI(体格指数)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

BMIは体重を身長の2乗で割って算出されたもので、肥満・痩せの指標として広く使われています。WHOはBMI25以上30未満を「過体重」、30以上を「肥満」と定義しています。一方、日本肥満学会はBMI25以上を肥満と定義しています。

というわけで、痩せすぎも病気のリスクが上がりますが、肥満は病気の元になるので、ダイエットは健康の面でも重要になってきます。

巷には、多くのダイエット情報が流れていて、どれを選べばいいか逆に難しいほどです。

ダイエットも、やり方を間違えばお金や時間の無駄になるだけでなく、かえって健康を害してしまう可能性すらあります。

結論から言うと、体重を減らしたいのであれば、最も効果的なのは食事を変えることであり、運動はそれに比べると影響は小さいようです。

ただ、体重を落とすだけでなく見た目も整えるのであれば、運動もセットで行うのは必須だと思います。

<痩せた人太った人、それぞれが食べていたもの>

摂取カロリーを減らせば痩せる、消費カロリーを増やせば痩せるといったことは聞いたことがあると思いますが、これについてはよく考えてみてください。

もし本当に摂取カロリーのみで、太るか痩せるかが決まるのであれば、100㎉をイチゴのショートケーキで摂取しても野菜サラダで摂取しても、理論上では体重への影響は同じになるはずです。でも実際には、与える影響は違うことは経験から私たちは理解しています。

同じカロリーや糖質であったとしても、体重への影響は違うわけで、カロリー計算を用いてダイエットをすること自体が間違っているのです。

ハーバード公衆衛生大学院の研究チームが行った研究が2つあります。

一つ目の研究は、アメリカ人約12万人を12〜20年間追跡し、食生活の変化と体重変化の関係を評価したものです。

4年ごとにデータを区切り、その期間における「食事の変化量」と「体重の変化量」の関係を解析しました。

その結果、フライドポテトやポテトチップスの摂取量が増えている人ほど体重が増加しており、ヨーグルトやナッツ、野菜や果物の摂取量が増えた人ほど体重が減少していました。

興味深いのは、似たような食材でも加工方法の違いで体重への影響が正反対になるものがあるということです。

例えば、パン・パスタ・白米などの精製された白い炭水化物をの摂取量が増えている人ほど体重が増加しているのに対して、全粒粉・玄米・オートミールなどの茶色い炭水化物の摂取量が増えている人ほど体重が減少していました。

果汁100%の野菜ジュースの摂取量が増えている人ほど太っていたのに対し、未加工の果物の量が多くなった人ほど痩せる傾向にありました。

ナッツの摂取量が増えている人は痩せる傾向にあり、日本では太らないと言われてきた赤い肉(四つ足の動物の肉のこと)の摂取量が増えた人は、実は太っていました。

二つ目の研究では、同じ研究チームでアメリカ人約13万人を追跡し、野菜と果物の種類によって体重が変わってくるかを評価した研究です。

じゃがいも・とうもろこし・エンドウ豆のようにデンプン質の多い野菜の摂取量が増えている人は、太る傾向にあることがわかりました。

特に痩せていた人が多く食べていた果物は、ブルーベリー・プルーン・りんご・梨・いちご等で、野菜に関しては、大豆・カリフラワー・ズッキーニ・サヤインゲン・ピーマン・ブロッコリーなどを食べていた人は痩せる傾向にありました。全体的に、食物繊維が豊富なものが多いようです。

これらの研究は、総摂取カロリーだけでなく、1日の運動量・座っている時間やテレビを観ている時間・喫煙習慣・睡眠時間などのほかの生活習慣に関して、統計的な手法を用いて影響を取り除いています。

食事の影響については、個人差がある可能性もあると思いますので、ご自身で食事内容を変えてみて、体重がどのように変化するかを見てみるのも一つの方法です。

<糖質制限ダイエットはどうだろうか>

最近、よく本などにも出ている糖質制限ダイエットについて、日本で流行っていますが、この本の著者はおすすめしない意向を示しています。

体重を減らすことはできるかもしれませんが、死亡率が高くなるなど健康を害してしまう可能性も高いからです。比較的短期間で痩せることはできますが、6か月以上続けることが難しいという統計もあります。

炭水化物に注目してみると、ご飯・パン・麺などの炭水化物は太る代表的なものなので、ダイエットをする人たちの中には避けている人も多いかと思います。炭水化物もきちんと選んで味方につければ、腹持ちの良さから空腹によるストレスを避けてくれるのです。

では、どんな炭水化物を選べばよいのでしょうか。

白米や小麦粉のような精製された白い炭水化物は、結論から言うと糖尿病のリスクや死亡率が高いことがわかっています。逆に、玄米や全粒粉、蕎麦といった茶色の炭水化物は糖尿病や大腸がん、死亡率が低いと報告されています。

ダイエットに有効なのは、血糖値の上昇スピードが緩やかになるからだと考えられています。玄米の外皮に含まれる不溶性の食物繊維やその他の栄養素が身体に良いとされているからです。

また、インドで行われた実験では、白米と比べて玄米は血糖値の上昇を20%減少させました。日本で行われた実験では、玄米に変えると血糖値とインスリン分泌量が減るだけでなく、血管内皮の状態も改善すると報告されています。

韓国では玄米の外皮を摂取することで、腹囲が減ったという実験結果も出ました。

とはいえ、現代人の胃腸の消化力が落ちているせいか、玄米を食べると胃に負担がくる・胃が痛くなるという人も少なくないようです。

ご飯は100回噛んで食べるという先人の言葉がありますよね。この言葉は玄米を食べる時に、消化をよくするために言われていると聞いたことがあります。

もし胃腸に負担がかかるようでしたら、寝かせて発酵させた寝かせ玄米をおすすめしています。もしくは七分付きや五分付きで精米された白米を選んでください。

また、玄米の外皮について説明しました。玄米の場合はこの外皮で覆われているため、必ず無肥料無農薬で作られたお米を取ってください。この外皮に農薬などが入りこんだままだと、せっかくの栄養価も台無しになってしまいます。

玄米は腹持ちがとても良いので、空腹を我慢しながらダイエットしなければいけないストレスが減り、長く続けることが可能です。

では、どれくらい摂取すればいいのかと言いますと、炭水化物の摂取割合と死亡リスクとの関係性を表すグラフを見たところ、炭水化物の摂取量は、多すぎても少なすぎても不健康になってしまうようです。グラフはU字の関係にあることが言われています。

糖質制限ダイエットをしている人の中には、肉などのたんぱく質の摂取量を増やすことで満腹感を得ている方も多いかと思いますが、肉を食べ過ぎると大腸がんのリスクが高まります。そこで、茶色い炭水化物を多くとるようにするだけでも、健康に良いだけでなくダイエットにもなることが研究結果からわかっています。

糖質制限ダイエットは副作用も懸念されています。

不溶性の食物繊維の量が減るので、約7割の人が便秘になり、6割の人が頭痛を経験すると報告されています。

<運動だけで痩せることは難しい>

それでは運動はダイエットにどれくらい有効なのでしょうか。

食事はあまり我慢したくないので、食事制限はせずに運動のみでダイエットしようとする人もいるでしょう。しかし結論から言うと、食事制限をせずに運動のみで体重を減らすことは難しいことが、研究からもわかっています。

では、なぜ運動のみでは難しいのでしょうか。

痩せるには摂取カロリーより消費カロリーが上回ればいいという考えがあります。

ですが、この消費カロリーの多くは、基礎代謝(生命活動を維持するためにじっとしていても消費するカロリーのこと)や食事の時に使う代謝のことで、運動によって消費されるカロリーは、全体の10~30%と実は少ないのです。

つまり、摂取カロリーは口からすべて入るので、自分でコントロールすることができても、消費カロリーについてはコントロールできる部分は、自ら動くことによって消費される10〜30%の部分しかできないのです。

消費カロリーの大部分が基礎代謝なため、運動量を増やしても消費カロリーはあまり増えないのです。

~運動をすると基礎代謝が落ちる~

消費カロリーが運動で増えたとき、摂取カロリーが変わらなければ、理論上は痩せるのですが、人間のメカニズムとして生存させるためにあらゆる機能が働くと考えられています。

1.運動をするようになるとお腹がすくようになり、食事の量が増え、摂取カロリーが増え  ようになる

2.運動をするようになると、横になって身体を休める時間が増えるなどして、日常生活に  おける活動量が減る

3.運動をすることで基礎代謝が落ちて、それ以上エネルギーがマイナスの状態にならない  ようにストップする

このように、カロリーバランスが生命の危機を脅かさないように配慮されているため、運動のみを増やすのでは難しいのです。

では、本当に運動のみで痩せることは不可能なのでしょうか?

運動のみで痩せるのは難しいと言いましたが、実際、必ずしもそうではありません。

ですが、かなりの運動量が必要となってくるのです。

例えば、52名の肥満男性を対象とした実験結果によると、運動のみで体重減少したグループは、1日当たり60分(700㎉)の運動が行われ、これは一般的に推奨される週150分間の運動よりかなり多い量でした。

似たような研究結果は複数存在しており、これらの結果を受けて、米国スポーツ医学会と米国糖尿病学会は「運動のみで体重減少を達成しようとするなら1日60分以上の運動が必要である可能性がある」という共同声明を発表しています。

また、ダイエットに成功したとしても、一度減った体重を維持するためには、かなりの運動(体重1㎏辺り11~12㎉/日が必要であると複数の研究結果からわかっています)。

ではその運動の種類によって、結果は違うのでしょうか。

有酸素運動と筋肉トレーニングを比較した実験結果によると、有酸素運動のみをしたグループの方が8か月後の体重減少が大きかったと出ています。

ちなみに、有酸素運動と筋肉トレーニングの両方をやったグループも、有酸素運動のみをしたグループと同じ結果だったそうです。

この研究結果でも体重はそんなに落ちなかったようですが、運動をするならダイエットのためにはぜひ有酸素運動にしてみてください。

しかし体重が減らなくとも、運動することで筋肉量が増え、腹囲が減って見た目がスリムになるという効果は期待できます。

また、運動は高血圧・糖尿病・認知症などのリスクを下げますので、健康的に痩せるだけでなく健康に生きていくためにも必要で、人生をより良いものにしてくれるでしょう。

引用元)「HEALTH  RULES  病気のリスクを劇的に下げる健康習慣」RULE4より

      著者:津川友介(UCLA准教授・医師)

      出版社:集英社

      発行年:2022年1月30日

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この記事を書いた人

「医者や病院任せではなく、自分を知って治療法を選ぼう」医療に対する考え方や治療法の選び方が多様化している現在において、いしゃっちはそのひとそれぞれの状態や信念に基づいて、無理なく負担がない治療法を一番に推奨したいために、統合医療という形で情報提供していくつもりです。気軽にいろんな治療法を知っていただき、ご自身に合ったものを選んでいただけたらと思いまして、とかく重たくなりがちな医療ですが、いしゃっちという軽やかな名前を付けさせていただきました。

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