標準治療以外の未承認治療について

これまでは、保険適用である標準治療について、詳しく解説してきました。

今回は、エビデンスが不十分だったり、未承認ではあるけれど、新しい治療法として確立され、未来に期待されつつある未承認治療についての記事を書いていきたいと思います。

<まだ効果が証明されていない3つの未承認治療>

先進医療と治験

原則的に、臨床研究(臨床試験)として行われます。

臨床研究とは、人間を対象とした医学研究のことです。

臨床試験とは、臨床研究のうち、新しい治療法などを厳密に評価する試験のことです。

ちなみに、臨床試験ということは、この新しい治療法を確かめるための治療でもありますので、参加された患者さんにとって、効果が抜群にあることもあれば、これまでわからなかった副作用が出るかもしれません。

そのことを踏まえたうえで、患者さんが自由意思で同意(インフォームド・コンセント)をする必要があります。

データ管理の方法まで規定されているので、出てきた結果の信頼性が担保されています。

臨床試験で有効と判定されれば、標準治療として認められ、保険適用になります。

ただし、せっかくデータを集めて先進医療として扱われることになっても、その後、標準治療として認められるエビデンスがそろわなければ、外されることもあります。

例えば水素吸引は、慶応義塾大学が熱心に研究されており、2016年から2022年までは先進医療Bでしたが、エビデンス不足とコロナ禍で研究の優先度が下がったため、先進医療から外されています

先進医療と治験は、標準治療のように効果や科学的根拠が保証されたものではなく、あくまでも研究段階の治療法なので、がん治療であっても、がんのステージが上がれば適応できないなど、どんな状態でも使えるというわけにはいかないところもあるようです。

代替医療

代替医療の場合、漢方などには保険適応のものもありますが、多くは全額自己負担となります。

本来ならば、臨床試験として提出されるべきものなのですが、日本では完全にデータ不足ですし、臨床試験をするための法的な規定や規制はありません。

また、代替医療はそもそも、その土地独自に昔から伝わる伝統医療をベースとしているところもあり、西洋医学と同じ土台で比較検討することが難しいという観念もあります。

また、がん治療という観点で言うと、がん専門の代替医療の治療施設は、メキシコのティファナという都市にあり、そこでは長年のデータを取っているようです。

日本にも、数少ないですが、がん専門の代替医療をほどこす治療院があります。

1.先進医療

先進医療とは、臨床研究である程度効果が認められているものの、承認して保険適用するほど信頼性の高いデータが得られておらず、あともう少しという治療法のことです。

毎年、約100種類の先進医療が指定されていますが、そのうち効果が証明されて保険適用になる治療法は、1999年から2016年までの間で、109種類のみでした。わずか6%です。

有名なものでは、陽子線治療重粒子線治療・乳がんのセンチネルリンパ節生検などがあります。

2020年の時点において、先進医療87種のうち、がん関連のものは37種ありました。

もし、先進医療を受けてみたいなと思われるようでしたら、指定の医療機関で受ける必要があります。

医療の内容や医療機関の情報に関しましては、厚生労働省のウェブサイト「当該技術を実施可能とする医療機関の要件一覧及び先進医療を実施している医療機関の一覧等について」を参照してください。

また、先進医療に関わる費用は全額自費となりますが、初心、再診料・検査・注射・入院料などの一般診療は保険請求できます。

民間のがん保険には、こうした先進医療の費用をカバーするものもあります。

2.治験

治験とは、製薬企業が開発した新しい治療法が、本当に安全かどうかを調べる臨床試験のことです。フェーズⅠからⅢまであります。

新薬が開発されてから、基礎研究と臨床試験を経て承認されるまでには、約15年かかり、その成功確率は1万分の1程度と言われています。

例えば、オプジーボは製品化までに22年かかっています。

治験に参加する際には、どのフェーズの臨床試験であるかを確認し、後期のフェーズほど有効な治療法が含まれていると認識しておいた方が良いでしょう。

注意しなければいけないのは、フェーズⅢの場合、新しい治療法と従来の治療法とにランダムに振り分けられるため、必ずしも新しい治療法を受けられるとは限らず、標準治療が存在しない治験では、「プラセボ」という偽薬を受けることもあります。

治験にはいろいろな参加条件がある場合が多いため、希望しても必ず受けられるとは限りません。参加できるかどうかの検査が、事前に行われるようです。

治験は、治験薬・診察料・検査費用、場合によっては入院費も無料です。

通院が必要な場合は、一回につき、7000円の通院費が支払われます。

新しい治療法で重い副作用が出た場合には保証制度などもあります。

ただし、治験を受ける際は、必ず主治医と相談してください。

検討している治験に参加することが望ましいのか、アドバイスをもらえると思います。

ちなみに、この本の著者の一人である大須賀覚先生は、新薬開発の専門家です。

アメリカのアラバマ大学バーミンガム校の助教授をしています。

がんはどのような病気なのかを研究し、その結果をもとに新薬開発をしています。

3.代替療法

がん治療における代替療法のほとんどが、補完代替療法と呼ばれるものです。

これには、漢方薬・鍼灸・健康食品・アロマテラピー・アーユルベーダなどといった伝統医療や食事法などが含まれます。

ほとんどの人が標準治療の補完として、漢方薬を服用したり、鍼灸やアロママッサージをしたり、どちらかというと、抗がん剤治療の副作用を軽減するためであり、それ自体ががんを直接治療するものは少ないです。

もちろん、がん治療専門の代替医療専門の治療院もあり、がんに対して独自のアプローチで治療しているところもあります。

どちらかというと代替医療は、がんを直接治療するというよりむしろ、自身の免疫力の強化や抗酸化作用、血液循環をよくするなどといった体の働きを補強して、がんを克服できる体作りがメインの治療といえます。なので、標準治療より治療期間が長期にわたることもあります。

伝統医療ではありませんが、ビタミンC療法や免疫細胞療法のような目新しそうな治療法も、自由診療という観点から、代替医療に含められています。(本来は、こちらも臨床研究として行われるべきですが)

自由診療の中でも特に注意が必要なのは、免疫細胞療法です。

免疫細胞療法とは、免疫細胞であるリンパ球をいったん体の外に取り出した後、培養し、活性化させ、再び患者さんに戻してがん細胞を攻撃してもらおうという治療法のことです。

古くから研究はありますが、効果が証明されて保険適用となったものは、ほとんどありません。

免疫療法の中で最近期待されている治療法に、CAR-T療法があります。

これは、免疫細胞療法を改良した治療法です。

2019年に承認され、標準治療のひとつになっています。

ですが、「サイトカイン放出症候群」と呼ばれる重篤な副作用が、患者さんの22%に発症しており、集中治療室での管理が必要なほどだったそうです。

代替医療も、可能ならきちんと臨床試験が行われた方が、いいに越したことはありません。

近年では、西洋医学との相互作用なども含めて、アメリカでさかんに臨床研究が行われるようになっています。

引用元)「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」第2章より

     著者:大須賀 覚、津川 友介、勝俣 範之

     出版社:ダイヤモンド社

     発行年:2020年4月

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この記事を書いた人

「医者や病院任せではなく、自分を知って治療法を選ぼう」医療に対する考え方や治療法の選び方が多様化している現在において、いしゃっちはそのひとそれぞれの状態や信念に基づいて、無理なく負担がない治療法を一番に推奨したいために、統合医療という形で情報提供していくつもりです。気軽にいろんな治療法を知っていただき、ご自身に合ったものを選んでいただけたらと思いまして、とかく重たくなりがちな医療ですが、いしゃっちという軽やかな名前を付けさせていただきました。

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