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知られざる抗がん剤の世界~第4の治療法!緩和ケア
前回、標準治療における3大治療とはなんぞや、という基本的なところを解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
今回は、その中でもとりわけよく使用されている抗がん剤治療について、もっと深堀していきたいと思います。
日本の抗がん剤治療の多くは、外科医によって行われています。
諸外国におきましては、抗がん剤治療専門医である腫瘍内科医が担当し、抗がん剤の量を調節したり、副作用をよく理解して、必要な時は減量したりするのですが、残念ながら日本の現状では、正しく抗がん剤を取り扱う専門医が、圧倒的に少ないようです。
ちなみに、アメリカの腫瘍専門医が1万7601人に対して、日本は1330人と、アメリカの13分の1しかいません。
腫瘍内科医は、抗がん剤治療のエキスパートなだけでなく、あらゆる癌に関して、診断から治療を担当するがん専門医です。
残念ながら、この腫瘍内科医のいない病院では、がん患者さんの総合的なマネージメントができる医師がいないこともあり、正しい抗がん剤治療が行われていないという問題があります。
例えば、副作用を恐れてむやみに抗がん剤を減量してしまったり、逆に減量せず投与したものの、副作用管理がうまくできなかったりする現状があるようです。
よく、抗がん剤で身体がボロボロになってしまったと聞くのも、専門医が不足しているという背景があるようです。
また欧米では、抗がん剤の副作用管理が進歩したおかげで、血液がん以外のほぼすべての固形がんの抗がん剤治療は、通院治療で行えるようになりました。
しかし、こちらも日本では、通院治療が可能な抗がん剤治療も、いまだ入院して行われるケースが多いのです。厚生労働省のデータにも記されています。
<抗がん剤の種類>
・殺細胞薬(従来の抗がん剤) 細胞の核を攻撃する。正常細胞も破壊し、副作用大。
・分子標的薬(最近の抗がん剤) がん細胞の増殖に関わる特定の分子だけを狙い撃ち。
・ホルモン療法薬(抗がん剤とともに用いる) 性ホルモンが原因のがんに使用。
分子標的薬が登場したことで、今まで治療が難しかったがんにも、効果を発揮できるようになりました。日本では2001年に承認。
ノーベル賞を受賞した本庶先生が開発にかかわったオプシーボも、分子標的薬の一つです。
・オプシーボ 従来の主にがん細胞を増殖させる分子を治療ターゲットにしていたのに対 し、免疫を抑制する機能をもつ分子をターゲットにしています。
そのため、『免疫チェックポイント阻害薬』と呼ばれます。
副作用)間質性肺炎、皮疹など(従来の抗がん剤よりは少ない)
免疫機能を担当するリンパ球の免疫力を高めすぎてしまうため、重症筋無力症や
副腎不全などの重篤な副作用(自己免疫疾患)が10%の患者さんに出ます。
<がんのステージや種類によって治療法は異なる>
がんの治療方針は、主にステージによって決められます。
ステージⅠ・Ⅱ 局所治療である手術や放射線治療を行います。
ステージⅢ・Ⅳ 局所治療に加えて、全身治療である抗がん剤治療を組み合わせます。
ステージⅣ・再発 遠隔臓器に転移があると、抗がん剤治療が主体になります。
局所治療が終了していったん回復しても、がんが数年たって再発するのは、血管やリンパ管に浸潤した微小な癌細胞が全身に回ることがあるからです。
浸潤したがん細胞はとても小さいため、血液検査ではわかりませんし、CTやPET検査などの画像診断でもわかりません。
ステージによって、おおまかな標準治療の組み合わせはありますが、実際には、患者さん自身の年齢や合併症の有無、肝機能や腎機能などといった個別の状況によっても変わってきます。
抗がん剤においても、その組み合わせがいくつもあり、一つではありません。
また、専門医によっても見解が異なることがあります。
がんの専門医には、外科医・腫瘍内科医・放射線治療医・放射線診断医・緩和ケア医・精神腫瘍医などいろいろな専門家がいます。
ちなみに、この本の著者の一人である勝俣範之先生は、がん治療に特化した「腫瘍内科医」専門の先生です。国立がん研究センター中央病院の乳腺・腫瘍内科に約20年在籍した後に、日本医科大学武蔵小杉病院で腫瘍内科を立ち上げました。現在も豊富な知識と経験をもとに、毎日のようにがん患者さんに接している先生です。
国や地域で指定されているがん診療連携拠点病院では、患者さんの治療方針は、複数の専門家が相談して決めます。(キャンサーボード)
もし、担当の意志の治療方針に納得がいかなかった場合やほかの専門医の意見を聞きたい場合は、セカンドオピニオンが可能です。
<緩和ケア>
標準治療の一つとして、重要なものに緩和ケアがあります。
緩和ケアとは、がん患者さんの痛みや苦しみを和らげる治療のことです。
これには、副作用によるつらさのケア、メンタルサポート、患者さんのご家族に対するサポート、必要であれば、宗教やスピリチュアルの支援が含まれます。
一般的なイメージでは、終末期の患者さん向けの治療なのかなと思いがちです。
また、実際に長い間、治療的な効果はないと考えられていたため、もう施すことは何もない患者さんに向けられた治療法というイメージを持たれることが多かったのです。
そんな中、2010年世界で最も権威のある医学雑誌の一つ「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、緩和ケアに延命効果があるという論文が発表されたのです。
実際に、抗がん剤のみのグループと抗がん剤に加えて、月に一回、緩和ケアチームの外来受診を行うグループとに分けて調査したところ、緩和ケアを受けていた患者さんは、生活の質が高かっただけでなく、うつ症状も少なく、生存期間の延長も認められました。
副作用のほとんどない緩和ケアで、抗がん剤と同じような治療効果をもたらすことがあると、化学的根拠として認められたのは、大変画期的で喜ばしいことです。
やはり、病は気からです。
日本ではよくないイメージをもたれている緩和ケアですが、早くから積極的治療(3大治療)と並行して行うべきものだという認識をもつ病院が増えればと思います。
決して、治療が行き詰った時の主治医からの二者択一だけに、用いられるようなものではありません。立派な第4の標準治療法です!
そして、2012年には「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が重点事項に位置付けられました。ですので、日本のがん患者さんも、積極的に早期から緩和ケアを取り入れてみることをお勧めいたします。
また、治療法とは反れますが、がん患者さん専用のオンラインサロンやコミュニティも、実際の患者さん同士の情報交換の場になったり、励ましあったりでき、心強い味方になっているようです。
こちらにつきましては、後日また記事にしたいと思います。
引用元)「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」第2章より
著者:大須賀 覚、津川 友介、勝俣 範之
出版社:ダイヤモンド社
発行年:2020年4月
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